吉祥寺のおとなり「西荻窪駅」から徒歩7分、大きなモチの木が目印のギャラリー&ブックカフェ「松庵文庫」。「おばあちゃんの家に遊びにきたみたい」「まるで鎌倉に旅行に来た気分」「雨の日にこそ行きたい」などなど、多くの大人たちの心を魅了しています。松庵文庫の魅力を探るべく、オーナーの岡崎友美さんにお話を伺いました。
樹齢100年のツツジの木が繋いだ縁
築80年の古民家の面影をそのままに
2013年7月にオープンした「松庵文庫」は、築80年にもなる古民家をリノベーションした建物。10年以上前から西荻窪に暮らしていた岡崎さんの手によって、ブックカフェ&ギャラリーとして生まれ変わりました。
「ここの古民家には、もともと音楽家のご夫婦が住んでいらっしゃいました。旦那様が亡くなられて、ここを手放すことにした奥さまに招かれたのがきっかけです。面白そうだから見てみようかな、と軽い気持ちでお邪魔したのを覚えています」
そんな岡崎さんの小さな好奇心が引き寄せたのは、思いもよらない大きな運命でした。
「そのとき奥さまが『ツツジの木を残したい』とおっしゃっていたんです。建物自体にも重厚な時間が刻まれているようで、私も『ここを壊すのはもったいない!』と思いました。それからどうしたらこの建物を残せるだろうと考え始めたんです」
樹齢100年のツツジの木が繋いだ縁。今では、春先には鮮やかな花を咲かせるツツジの木を見に来るお客様もいらっしゃるといいます。
心地よい時間が流れるブックカフェ&ギャラリー
ノスタルジックな雰囲気漂う店内
玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えてお店の中へ。家に帰ってきたような、ホッとする感覚をさっそく味わうことができます。
玄関を上がり、1階の奥には、広々として開放的なブックカフェ&レストランスペース。古民家の面影をそのまま残してリノベーションされた空間は、どこかノスタルジックな雰囲気です。大きな窓の向こう側に、ツツジのある庭を一望できるのも魅力的でした。
祖母の家で愛されてきた味わい深い家具
店内の至るところには、年代物のスピーカーやミシン台、ソファなど趣のある家具が置かれています。これらの多くは岡崎さんが祖母の家から持ってきたものなのだとか。長く大切に使われてきたものたちは、古民家の雰囲気をより味わい深いものにしているようでした。
西荻窪「本屋 Title」セレクトの書籍
店内に置かれている本は、西荻窪の書店「本屋 Title」がセレクトしたもの。料理、旅、暮らしにまつわるものなど、松庵文庫に通うお客様の目を引きそうな本が絶妙にセレクトされているといいます。
「松庵文庫の『文庫』という言葉には、“智慧が集まる場所”という意味があります。ここの空間を通じて、みんなの智慧を重ねて繋いでいく、そんな場所でありたいと思っています」
本はすべて店内のカフェスペースで読んでOK。ゆっくり珈琲をいただきながら新しい智慧に触れる、そんなひとときを過ごすことができるブックカフェです。
ギャラリーショップ
お店に入って左手側には、雑貨や食材が並ぶギャラリーショップがあります。岡崎さんが実際に使ってよかったと感じられるものを中心に、セレクトしているのだそう。どれも温かみが感じられて、ゆっくり手に取って選びたくなるものばかりでした。大切な方への何気ないプレゼントにもおすすめです。
和室の面影を残したシェアルーム
階段を上がると、2階には光あふれる空間が広がります。ここはシェアルームとして貸し出されており、毎月リース作りや器の金継ぎなどいろいろなワークショップが開催されているそうです。低めの天井や障子、押し入れ……昔ながらの和室の面影が大きく残されており、初めてお邪魔したにも関わらずとても懐かしい気持ちになりました。
「静かな時間の中でゆっくりお過ごしください」
「西荻窪は時間の流れがゆったりしていて、いい意味で力が抜けている街。そんな西荻窪にある松庵文庫は、土日はもちろん、平日の夕方や雨の日などの人が少ない時間帯にとてもいい時間が流れています。きっと非日常を味わっていただけると思いますので、お気軽にリフレッシュしにきてください」
西荻窪の落ち着いた街並みに溶け込んだ松庵文庫。無農薬コシヒカリや旬の野菜を取り入れたランチメニューのほか、手作りスイーツも人気とのこと。何も予定を入れない休日、ランチやカフェを楽しみながら本を読んでゆっくり過ごす。そんな静かな時間が必要だよ、と教えられた気がしました。吉祥寺から一駅、ときにはこんな素敵な時間が流れる〈松庵文庫〉に足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
松庵文庫(しょうあんぶんこ)
【住所】東京都杉並区松庵 3-12-22
【営業時間】11:30〜18:00
【定休日】月曜日・火曜日
【公式サイト】http://shouanbunko.com/