井の頭自然文化園で飼育されていた“ゾウのはな子”が天国に旅立ってから約1年。2017年5月、多くの人々に愛された“はな子”の銅像が、吉祥寺駅北口の広場に設置されました。右足を上げて今にも歩き出しそうな“はな子”の銅像は、吉祥寺の駅前に新たな華やぎをもたらしています。今まで、わかりやすい待ち合わせスポットがなかった吉祥寺。これから「待ち合わせは、はな子の前で!」が、吉祥寺好きの間の定番になりそうです。
吉祥寺のシンボル『ゾウのはな子』が銅像に
ゾウのはな子とは
2017年5月5日、吉祥寺駅北口の駅前広場で「ゾウのはな子」の銅像がお披露目されました。ゾウのはな子とは、吉祥寺にある井の頭自然文化園で飼育されていた、国内最高齢のアジアゾウのメスです。昨年2016年5月に69年という長い生涯を終え、天国に旅立ちました。
右足をちょこんと上げる、お決まりのポーズが愛らしい
銅像は全長約2.5メートル、高さ約1.5メートルで、ずっしり存在感があります。武蔵野市で生まれ育った美術作家・笛田亜希さんが原型を手掛けているのだそう。鼻をまげて右前脚をちょこんと上げる姿は、はな子が馴染みの見物客だけに見せたという、お決まりのポーズなのだとか。
除幕式では、井の頭自然文化園の園長が「100年、200年とはな子のことを伝えていきたい」と挨拶をされていました。吉祥寺から歩いて10分ほどの場所にある井の頭自然文化園では、7歳の頃からはな子が暮らしていたゾウ舎を今でも見ることができます。
「はな子」を知って、吉祥寺をもっと好きになる
吉祥寺の図書館には「はな子」に関する書籍がいっぱい
はな子についてもっと詳しく知りたい方は、はな子を題材にした書籍を読むのがおすすめです。ドラマチックな人生を送ったはな子は、子供向けの絵本から、大人向けの書籍まであらゆる世代の読み物に登場しています。
せかいでいちばん手がかかるゾウ / 井の頭自然文化園(著)
こちらは、はな子が67歳のときに井の頭自然文化園によって書かれた絵本。はな子の人なつっこい性格や、食べているエサや体調など、イラストやひらがなを交えてわかりやすく書かれています。
特に、ストレスで4本のうち3本の歯を失ってしまったはな子が食事をしやすいように特性の団子を作るシーンや、便秘がちだったはな子のお腹を飼育員みんなでマッサージするシーンが印象的でした。はな子にまつわるさまざまなエピソードを通じて「せかいでいちばん手がかかるゾウ」と言われる所以を知ることができます。
絵本でありながらも、人間と深く関わりを持ったはな子の生涯についてしっかり知識を深めることができる一冊。小さなお子様にはもちろん、童心に帰って、はな子に想いを巡らせたい大人にもおすすめです。
父が愛したゾウのはな子 / 山川宏治(著)
こちらは、井の頭自然文化園にて、親子2代ではな子の世話をした山川宏治さんの著書。はな子の一番近くで毎日を過ごした飼育員としての体験を通して、はな子の本当の姿を感じられる文章が綴られています。
はな子は、9歳と13歳のときに2度の事故を起こしてしまい、人に危害を与えるゾウとして、一時、暗い部屋で鎖に繋がれたままストレスの多い時期を強いられていたそうです。しかし、はな子の担当として井の頭自然文化園に赴任してきた著者のお父様である山川清蔵さんは、本来、穏やかなはな子の性格を見抜き、すぐに鎖をほどいて外に出してあげたといいます。
はな子がおずおずと明るい屋外にでていくシーンや、少しずつ人間に心を開いてくれる様子は感動的。読んでいるうちに、まるで自分がはな子を見守っているような気持ちになり、愛おしさで胸がいっぱいになりました。
今回ご紹介した2冊の本は、いずれも近隣の図書館で借りられるものです。武蔵野市には三鷹駅から歩いて15分の『中央図書館』、吉祥寺駅北口にある『吉祥寺図書館』、武蔵境駅南口にある『武蔵野プレイス』の3つの図書館があります。井の頭自然文化園の資料館でも、はな子に関する文献を読むことができますよ。
ゾウがいる街に暮らす
取材したこの日も、はな子像の周りは、小さなお子様を連れたファミリーや、はな子と同じ年くらいの老紳士、学生風の若い青年など、たくさんの人々で賑わっていました。はな子の銅像はこれから何十年、何百年と、吉祥寺の人々を見守り続けていくのでしょう。
慌ただしい通勤時間やクタクタの帰り道に“はな子”の姿を見かけたら、どこかホッとした気持ちになり、心が温まりそうです。ゾウがいる街に暮らす、そんな新しいステータスもいいかもしれません。
「はな子の前で待ち合わせね!」
これからは、そんな会話が吉祥寺の街の定番になりそうです。