中古住宅のリノベーションは、古い住宅の良さを残しつつ暮らしやすい内装にアレンジできることから、多くの方に選ばれています。実際にリノベーションをするときは、固定資産税にどう影響するのかも把握しておきたいところ。この記事では、具体的にどのようなケースが固定資産税に影響するのか、ご紹介します。
目次
固定資産税とは
まず、固定資産税についての基本的な内容を押さえておきましょう。固定資産税とは、土地や家屋などの建物、償却資産といった固定資産に対してかかる地方税のことです。地方税のため、国に納めるのではなく、固定資産の所在する市町村(東京23区は東京都)に納める税金です。この税金が発生するタイミングは、毎年1月1日で、その時の所有者が支払うこととなります。
建物や土地に関する固定資産税は、所有する固定資産の課税標準額に、標準税率となる1.4%を掛けて求めることが基本です。
固定資産税=課税標準額×標準税率(1.4% ※)
※標準税率は自治体により異なる
課税標準額とは、固定資産税を課税する対象となる金額のこと。そして、この算出の元となる固定資産税評価額は、3年に1度、評価替えが行われます。評価替えとは、資産価格の変動に応じて、評価額を適正な均衡のとれた価格に見直すことをいいます。
リノベーションは固定資産税に影響する?
次に、リノベーションを行った場合、固定資産税が増えたり減ったりするのかについて解説していきます。結論から言うと、リノベーションの内容によっては固定資産税に影響する場合があります。しかし、すべてのリノベーションが影響するわけではありません。
家屋の劣化にともない、生活していく上で必要に応じて行う部分的なリノベーションであれば、固定資産税は変わらないケースが多いです。つまり、年月が経つことで発生する補修に関しては、一般的に固定資産税に影響しません。
一方で、「建築確認申請」が必要となる大幅なリノベーションの場合、建物としての価値が上がり、固定資産税が増える可能性もあります。また、リノベーションにより、不動産登記の変更が必要になった場合も、固定資産税が増える可能性があります。
固定資産税が上がる可能性のあるリノベーション
それでは、具体的にどのようなリノベーションを行った場合に固定資産税が上がるのでしょうか?
床面積が増えるリノベーション
増築をともなうリノベーションの場合は、固定資産税が上がる可能性があります。たとえば、新たに部屋を増築したり、平屋の家屋を2階建てにしたりする場合が該当します。こうしたリノベーションは、住宅の総合的な床面積が変わるため、建築確認申請と不動産登記の変更が必要です。固定資産税標準額は、延床面積をもとに算出します。そのため、増築により面積が増えた家屋は、そのぶん固定資産税も増える可能性があります。
用途が変わるリノベーション
もともと住居として使用していた建物を、事務所や店舗用としてリノベーションした場合、建物の種類が変わるため建築確認申請と不動産登記の変更が必要となります。これにともない、登記の変更手続きをした旨が自治体に伝わり、改めて評価額が決定します。リノベーションによって建物の価値が変わることで、固定資産税も高くなる可能性があります。
住宅の主要構造部に関わるリノベーション
木造3階建ておよび鉄骨2階建ての住宅の場合、建物の主要構造部に手を加えるときは、建築確認申請を要します。主要構造部とは、柱や壁、床、屋根、梁、階段など、建築物の構造上、重要な役割を果たしている部分のことです。
また、柱や壁、床、屋根、梁、階段といった骨組みだけを残し、これに新たな壁や屋根、各種の屋内工事などを施していくリノベーションのことを「スケルトンリノベーション(スケルトンリフォーム)」と呼びます。こちらも大規模な修繕にあたり、同じく木造3階建ておよび鉄骨2階建ての住宅の場合、建築確認申請を必要とします。
こうした大幅なリノベーションは、住宅の見た目だけでなく、機能性・耐久性・安全性などが向上することになります。そのため、必然的に建物の価値が上がり、固定資産税も高くなる可能性があるのです。
固定資産税が下がる可能性のあるリノベーション
リノベーションによって固定資産税が下がる可能性もあります。具体的には次のようなケースが想定されます。
耐震改修工事
家屋によっては、耐震改修工事を行い申告することで、固定資産税の減額を受けられる可能性があります。減額の対象となれば、工事完了の翌年度から2年分、固定資産税が1/2となります。ただし、改修前の建物が昭和57年1月1日よりも前に建てられたものであること、新しい耐震基準を満たすことなどの条件があります。
省エネ住宅への改修工事
平成20年1月1日以前に建てられた建物について、令和4年3月末までの間に省エネ改修工事を行った場合、一定の要件を満たすと翌年度分の固定資産税額の3分の1が減額されます。
窓、床、天井、壁の断熱改修工事がこれにあたりますが、窓の工事は必須となります。加えて、50万円以上の費用を要し、改修後の床面積が50㎡以上、280㎡以下であることなども条件です。改修部位がいずれも平成25年省エネ基準相当に新たに適合することも必須です。
固定資産税の減額になるのは、一戸あたり120㎡の床面積相当分までに限られます。この制度は、もともと令和2年3月末までが適用期限でしたが、延長されることとなりました。
バリアフリー改修工事
通路の幅を広げる、手すりを取り付ける、段差をなくすなど、高齢の方や障害のある方が住みやすいように、バリアフリー改修を行うこともあるでしょう。このような場合、一戸あたり100㎡の床面積相当分に関して翌年の固定資産税を1/3に減額する制度もあります。適用要件は複数あり、65歳以上の方、要支援・要介護認定を受けている方、障害がある方のいずれかが居住していることや、築年数が10年以上経過していることなど。そのほか、補助金などを含めず50万円以上の工事費用が発生した場合など、さまざまな要件を満たす必要があります。
※令和3年11月現在の情報です。詳細は各自治体のホームページなどで確認してください。
まとめ
リノベーションの内容により、固定資産税は変わるケースと変わらないケースがあります。リノベーションを検討される方は、こうした情報も踏まえて計画することをおすすめします。固定資産税の増減を視野に入れてリノベーション工事を行いたい場合は、先にその旨をリノベーション会社に伝え、相談してみましょう。