リノベーションプランの打ち合わせの場などでよく出てくる「造作」「造作家具」という言葉。今回は「造作」という言葉の意味に加え、既製の家具にはない「造作家具」ならではのメリットをご紹介します。
目次
- そもそも「造作」という言葉の意味は?
- リノベーションならではの「造作家具」のメリットとは?
- 造作家具のつくり方
- 造作家具をオーダーするメリット
- 造作できる家具の種類
- 造作家具の施工事例
- 造作家具・既成家具それぞれ使い分けて快適な住まいを
そもそも「造作」という言葉の意味は?
リノベーションの現場で言われる「造作」は、建築用語で言うと「建物内部の柱・梁などの構造を除いた仕上げ・取付工事」の総称です。具体的には、天井・床・階段・敷居・框など大工による工事。それから建具枠や造り付け家具、出窓のカウンターなど、現場で加工・取付する工事は「造作」に含まれます。ですが、リノベーションによる住まいづくりの中で「造作」と言えば、大工工事でつくる“作り付け”の家具や棚、収納スペースのことを指すのが一般的です。
リノベーションならではの「造作家具」のメリットとは?
メリット1:置く場所や手持ちのアイテムに合わせ、ベストな寸法の家具がつくれる。
スツールの高さに合わせて造作したキッチンカウンター
造作家具の大きなメリットは「ミリ単位」で寸法指定できること。設置する場所や手持ちのアイテムにぴったりのサイズの家具を作ることができます。置きたい空間の幅や高さに合った既成家具を探すのは困難ですが、造作ならジャストサイズ。例えばキッチンの造作カウンター。お気に入りのスツールに高さを合わせて造作することもできます。
メリット2:オンリーワンの家具や、アイデアを活かした家具がつくれる。
座面の下に収納できる造作ベンチ
既成ではなかなか見つからない、生活スタイルにぴったりのオリジナル家具も作り付けることが可能。キッチンと一体になったダイニングテーブルや、家族のコミュニケーションにも配慮したリビングのワークデスク。蔵書に合わせて作る本棚、洗面台下の造作棚、ベッドやベンチの下の収納スペースなど。アイデア次第で、自分らしい暮らしにあわせたオンリーワンの造作家具も実現します。
メリット3:室内のテイストにあったカラー・素材で、統一感のあるインテリアに仕上がる。
空間にあわせたテイストの飾り棚
既存の家具でコーディネートするならカラー・素材などを吟味してセレクトする必要がありますが、造作なら最初から室内のデザインテイストにあわせて作るので、自ずと統一感のある空間に仕上がります。写真のLDKでは、キッチンの腰壁にギャラリー感覚で楽しめる飾り棚を配置していますね。空間のイメージに合わせられるのは造作ならではのメリットです。
メリット4:作り付けたり補強をすることで、地震への備えもしっかりと。
間仕切りも兼ねた造作の書籍・CD収納棚
既成の家具を置くのに比べて、作り付けの棚や吊り戸棚は耐震面でも安心。単独の造作家具も、大工工事で金具などを取り付けて補強することが可能です。いざという時の備えとしても利点があります。
造作家具のつくり方
造作家具の種類や、造作家具をつくる方法についてご紹介します。
造作家具をつくる方法
大工工事
現場で大工さんが材料から家具をつくる方法です。工事現場に板材や金物などのパーツを持ち込みその場で製作するため、造り付けるスペースにぴったり収めることができます。フローリングやドアなどと色味を合わせる場合も、現場で実物を見ながら塗装の調整が可能。お部屋全体との統一感を出しやすい方法と言えます。
パーツを持ち込むため搬入しやすく、家全体の造作工事に盛り込めるため、比較的ローコストな点も魅力です。
ただし、現場作業のため、作業環境や機械が家具工場に比べ制限されます。複雑な加工が必要な家具には不向きな場合も。作業環境と大工さんの技量に左右されることから、完成度が家具工場でつくる場合より劣る可能性があります。
家具工事
家具工場でオーダーメイドの家具をつくる方法です。完成品を現場に納入する場合と、パネルやパーツを搬入して、現場で組み立てて設置する場合があります。家具工場には専用の機械があり、板材などの種類も豊富に揃えられています。そのため、構造が複雑な家具や工事現場での加工が難しい家具も高い完成度で製作することができます。家具製作の工程が、現場の工程の遅れの影響を受けない点もメリットのひとつです。
設置したときに若干の誤差が出た場合は、台輪や支輪を使用して微調整します。なお、家具工場から現場まで配送し設置作業をおこなうため、大工工事にくらべコストが高めになることが想定されます。
造作家具をオーダーするメリット
造作家具をオーダーするメリットには下記のような点が挙げられます。
・天井や壁などの高さや形状にぴったり合わせられる
・デザインや色味を統一することができる
・造作家具どうしを組み合わせ、別の機能性を持たせることができる
・配線用の穴を開けるなど、使い勝手の細かい調整ができる
・インテリア重視のつくり方も、機能重視のつくり方も対応可能
家と家具のコンセプトを合わせたり、細かいこだわりを反映できる点が、家に合わせて家具を選ぶ場合と異なるポイントです。
造作できる家具の種類
前述のメリットを活かした造作家具の例をご紹介していきます。
収納棚
- 天井から床までの高さの壁一面の本棚やオープンシェルフ
- 複数の機能を持たせた収納棚
- 部屋と部屋の間仕切りを兼ねた本棚
- 壁一面の木製キャットウォーク
- TVボードを兼ねた収納棚
- 小上がりの床下収納
- 階段下の収納棚
など
棚の種類や用途はさまざまです。天井の高さや壁の幅、部屋の使い方や暮らしに合わせて、オーダーメイドの棚を取り付けることがよくあります。
デスク / テーブル
- キッチンカウンターとひとつづきのダイニングテーブル
- 壁のサイズに合わせたワークスペースのデスク
- 壁面本棚に組み込んだ勉強机
など
ほかの造作家具や壁のサイズに合わせて、デスクやテーブルを造り付けるケースが多くあります。テーブル天板にコンセントを取り付けたり、配線を通す穴をつくっておくなどの加工をする場合も。
ベッド
- 造作の勉強机と同じ木材を使用した子供用2段ベッド
- 高さ80cmのウォークイン床下収納を備えたロフトベッド
など
子供部屋に2段ベッドと勉強机をセットで造り付けるのがよくあるケースです。部屋のサイズ、用途、デザインに合わせて、自由な発想で造り付けることができます。
造作家具の施工事例
木の質感にこだわった造作家具
ご夫婦とお子様2人の4人家族のお住まい。デザインのテーマは「ミニマル×乾いた質感」。
机や本棚などの造作家具もあえて無塗装にしました。造作家具も含めて木の質感が活かされた心地よいお住まいになっています。
▼このおうちの詳しい写真や間取りを見る
『家族の会話が行き交うミニマル空間』
https://www.renoveru.jp/renovation/333
オリジナルテーブルでカフェの雰囲気を
ご夫婦とお子様2人の4人家族のお住まいです。LDKの本棚、ダイニングテーブルなどの造作家具は、憧れの家具職人さんに製作を依頼。将来引っ越す事になった場合も持ち出すことができる造りになっています。
▼このおうちの詳しい写真や間取りを見る
『センスをかけ合わせてつくった居心地のいい空間』
https://www.renoveru.jp/renovation/334
造作家具・既成家具それぞれ使い分けて快適な住まいを
メリットの多い造作。懸念点をあげるとすれば、模様替えの柔軟性やライフスタイル・好みの変化にあわせて取り替えられるというフレキシブルさでは、既成の家具に軍配が上がります。それぞれの良さを上手に取り入れて、造作・既成を使い分けた心地いい住まいにできるのも、リノベーションの魅力ですね。
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【記事監修】リノベる。設計担当安江浩(やすえひろし) 大学卒業後、設計事務所で戸建住宅の設計等を担当。様々な建築家とコラボレーションを経験後、オフィス什器メーカーにてオフィス設計に従事。 2012年リノベる入社後は設計担当として案件を担当し、現在は設計施工部門の管理職として現在に至る。 |
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