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【Vol.91】一棟現場で活躍する現場歴50年超のベテラン支援者。CREリノベーション急成長を支える影の立役者に迫る。
リノベるはミッション「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」のもと、3つのリノベーションプラットフォームを構築し、「課題を価値に」変えるリノベーションを提供しています。
そのうちの一つが「CREリノベーションプラットフォーム」。そこでは「まちの新しい価値になる」という事業ビジョンのもと、建物や土地の価値向上や再生事業のプロジェクトを、事業企画、設計、施工、運営までワンストップでマネジメントする「都市創造事業」を展開しています。
前回の記事では、都市創造事業の営業から設計までに焦点を当てました。今回は、この3年で実に成長率200%を達成した都市創造事業の施工の現場を支えるメンバー達のお話しです。
リノベるの一棟リノベーションの現場を支えるのは、リノベるの技術統括部、そして、テクニカルアドバイザー、通称「支援者」として活躍するゼネコン出身のベテランスタッフたちです。
急成長する都市創造事業部の施工現場をマネジメントするリノベるの「技術統括部」とは何をしていて、プロジェクトを基盤から支える「支援者」とはどんな人たちなのでしょうか。
「支援者」の一人である小林俊雄氏(写真中央)と、支援者を統括する都市創造本部 技術統括部部長の平山雄一(写真左)、現場で支援者と関わりの多い若手社員をまとめる技術統括一課副課長の大久保智博(写真右)に話を聞きました。
左から、平山雄一、小林俊雄、大久保智博
■1棟リノベーション事業を支える、縁の下の力持ちの存在
――まず、平山さんが統括している技術統括部は何をしている部署なのでしょうか。
平山
技術統括部は施工の管理を行っている部署です。プロジェクトが事業企画、設計、施工、運営と続いていく中で、施工領域を担っています。
――では、テクニカルアドバイザー、通称「支援者」とはどんな方で、リノベるではどんな業務に携わっているのでしょうか。支援者としてリノベるに加わることになった背景も教えてください。
平山
支援者とは、プロジェクトが最も良い形で完了できるよう、様々な面でサポートしてくださる業務支援者のことです。現在東京に5名、大阪に2名の支援者が在籍しています。7名とも大手ゼネコンに勤務し、さまざまな経験を積んできたベテランの方ばかりです。大手ゼネコンを引退後、支援者としてリノベると業務委託契約を結び、プロジェクトが円滑に、安全に、より良いものになるよう文字通り支援してもらっています。
まず、支援者と直接関わっている技術統括部の業務をもう少し詳しくお話すると、プロジェクトの施工計画から原価管理、受注後の工事工程管理や品質管理、安全管理を行っています。その中で、支援者の皆さんには主に設計時の注意点やポイントの指摘、材料費や人件費、外注費などの原価費用を計算・管理し、不足や無駄がないかなど検討してコスト改善を行う工事原価管理、施工中の現場を巡回しながら進捗管理や品質・安全管理などに携わってもらっています。
小林
じつは私が支援者の第一号で、前職を退職したばかりの2017年、66歳でリノベるに入社しました(注:当初は社員として入社したが、現在は業務委託として勤務)。
前職の時からリノベーションには興味があり、丁寧に建てた建物を壊すのではなく、活かして価値に変えることに魅力を感じていたんです。これからの未来に必要なことだと思っていました。
きっかけは、日本経済新聞で三井物産がリノベるに出資した記事を読んだことでした。その直後に山下社長がテレビのNewsモーニングサテライトに出ているのを見かけたんですね。調べてみたら、当時住んでいた社宅から歩いてすぐの場所に本社がありました。
ずっとやりたかったリノベーションに挑戦してみたい、リノベーションの現場で、これまでの経験や知見を未来につなげる仕事ができるんじゃないか、そう思い、ちょうど定年を迎えるタイミングで思い立って、ホームページの求人から問い合わせしました。リノベるはまだ若い会社でしたので、ここで若い人たちと一緒に仕事ができれば面白いんじゃないかと思いました。募集要項は45歳以下だった気がするのですが…応募してしまいました。20歳オーバーですね。(笑)
入社してみて感じたのは、リノベるは若く、経験値の少ないメンバーが多いということでしたね。私のように長く勤めていると、いろいろな失敗やミスも経験してきています。しかし、それがひいては品質を向上させることにつながっていきます。当時、リノベるは中型の案件を引き受けるようになり始めた時で、顧客に良いものを提供する以前に、クレームやトラブルにつながりかねない実情があるのではないかと気がつきました。
そこで、より多くの経験者を揃え、彼らの力を借りることが品質向上と着実な事業成長につながっていくのではないかと思い、都市創造事業の本部長の西郷さん、時には社長の山下さんにもたびたび進言し、説明を重ね、支援者を一人、また一人と採用してもらうことになりました。
平山
小林さんに入っていただいた当時は少額案件を数多く扱っていて、現場を巡回して管理するにもマンパワーが足りなくなりはじめていた状態でした。また、一棟リノベーションの現場は既存建物の解体からリノベーション方法まで、さまざまな知識が必要な難しい領域です。そこに業界歴が長く、専門知識に精通する支援者が加わってくれたことで、現場の円滑化、品質向上、安全対策の基盤強化につながったと記憶しています。
小林
現在在籍している支援者は全員、ゼネコン時代の先輩たちです。電気、工務、設計、設備、元現場所長や安全管理の専門家など、それぞれに専門分野を持つ人材をひと通り集めてきました。私の得意分野は「お誘い」ですのでね(笑)。
東京に在籍する支援者の皆さん。歴50年越えの大ベテランが並ぶ。
大阪に在籍する支援者の皆さん。西日本のリノベーション現場を支える。
■一棟リノベーション施工現場の裏側
――リノベるでの具体的な業務内容を教えてください。たとえばどんなふうに1日を過ごすのでしょうか。
平山
毎日どこかの現場を巡回したり、会社に来てもらったりというわけではないんです。プロジェクトごとに担当者を決めて、朝から現場に出向いて検査に立ち会ってもらったり、自宅から設計図面の検討会にオンラインで参加してもらい、設計段階でリスクをつぶせるようアドバイスを求めたりという具合です。巡回先もなるべく支援者の自宅から近い場所を担当してもらうよう心がけていますが、全国に現場があるので距離が遠い物件になってしまうこともありますね。
小林
平均すると週20~30時間の実働でしょうか。現場に行った際は支援者が写真つきで工事報告書をまとめ、技術統括部の部長である平山さん、副部長の鉾立さん、私、担当者に送ってもらいます。工事の進捗状況、品質、安全、環境、工程といった各項目ごとに細かくチェックし、気づいたことを指摘します。それに対し、「是正回答」として担当者が返事を投げ返します。社内ツールのチャットを使ってやり取りをしますが、これにより、どんな問題があるかが担当者間で把握、共有できます。
ベテランスタッフが現場を巡回してよい点も悪い点も報告書にまとめる方法は、私がゼネコン時代に作り上げたものです。当時非常によい方法だと思っていたので、リノベるでも採り入れました。
実際に使用している報告書。スプレッドシートにて管理している。
現場での様子
平山
こんなふうにベテラン支援者の力を生かすシステムをリノベーション会社で取り入れているところは、ほかにはないんじゃないでしょうか。
最近は扱う物件が大きくなってきたので、現場巡回は解体前、解体後、中間、竣工といった節目ごとに確認してもらうようにしています。また、たとえば検査のタイミングで仕上げを進めていくと隠れてしまう部分のチェックを専門分野ごとに現場でチェックしてもらうこともあります。平均すると多いときで週2~3回の巡回だと思います。
■ベテランと若手のチーム結成で起こる化学反応
――ゼネコン時代とは規模もやり方も違うリノベるの仕事ですが、面白みはどんなところにありますか。
小林
ゼネコンで働いていたころに比べれば小ぶりの物件が多かったので、最初はそれに対するギャップもありましたね。でも、都市創造事業部は企画から完工までワンストップで事業を行っていますから、そこが非常に面白く、やりがいがあると感じています。ゼネコン時代は入札後の施工にしか関われませんでしたから。ワンストップだからこそ、若い人も力をふるえる会社じゃないかと思います。
ギャップといえば、本社のリノベーションではコンクリートの躯体や配管をあえて見せているところがありますね。私らはずっと「ああいうのは恥だから隠せ」と言って作ってきたんですよね。それをデザインにしてしまうというのはすごいなあと思いました。色使いも非常に上手ですよね。最近になって、そうしたリノベーションの良さがよくわかってきました。
リノベる表参道オフィスの天井。築50年のビルをリノベーションしており、当時の職人へのリスペクトも込めて天井の躯体をそのまま生かしている。
――若手社員との交流はありますか。若手社員とベテランスタッフで新しい提案が生まれるといったことも期待できるのでしょうか。
大久保
図面設計の段階から工事を完了し引き渡すまで、場合によっては1年近くの間ずっと支援者の皆さんと相談しながら関わっていくので、私たち若手と支援者の関係性はすごく深くなります。知識の多い支援者にサポートしてもらい、一緒に造っていくような感覚でしょうか。安心感もありますし、勉強させてもらっています。
小林
若手の皆さんは本当にまじめで、がんばっているなと思います。私たちは木造については経験がないのでアドバイスができないのですが、そんなときは若手の皆さん自ら勉強して、問題があればとことん追求しています。これほど勉強するのかと驚いたほどでした。
東日本を中心に活動するメンバー。前列が支援者、後列がリノベる 技術統括部のメンバー。40の歳の差を超えて、信頼とリスペクトでつながる仲間たちだ。
西日本を中心に活動するメンバー。2名が支援者、両サイドにいるのはリノベる技術統括部のメンバー。若手も支援者も一緒にワンチームで造り上げていく。
――支援者が加わったことで、リノベるはどう変わったと感じていますか。
大久保
支援者の皆さんは一級建築士や施工管理技士など、全員が有資格者でトップレベルの方たちばかりです。最近は大手企業との大型案件が増えてきていますが、私たち若手だけでは人数も経験も少ないところ、支援者という存在がリノベるにあり、プロジェクトに参画していると伝えることで相手先に与える信用は大きいと思います。
また、1棟リノベーションでは元の用途とは違う用途で提案したり、社宅だったものに店舗を取り入れてみようといった新しい提案をすることがよくあります。そこにはさまざまな法律が絡んだり、守るべきルールが数多く出てくるため、担当者の目線だけでは場合によっては見落とすこともあるんですね。そんなときに支援者の皆さんがさまざまな案を出してくれたり、今後必要になる視点を投げかけてくれたりと、後ろでしっかりと支えてくれています。
平山
先ほどの業務以外にも、支援者の皆さんには若手の社員教育にも携わってもらっています。月に一度は支援者の皆さんと技術統括部全員が集まって、いろいろな議題を取り上げて会議をするのですが、そこでさまざまな意見交換や問題解決につながるやりとりを行っています。
私たちの部署以外にも、プロジェクトマネジメントの担当者との勉強会を開いていますし、そうした勉強会に参加を希望する社員が増えてきています。これまでの経験から失敗した事例や、こうすればコストカットできるといった事例など、専門知識を持った支援者との勉強会は若手社員にかなり大きな影響を与えていると思います。
一方でリノベるからのフォローとしては、会議の前に懇親会を開いたりして、より近しくコミュニケーションでき、動きやすくなるよう心がけています。
■「リノベーションならリノベるだね」といわれたい
――これからの支援者としてあるべき姿とはどんなものですか。支援者とともに作る今後の事業展望も教えてください。
小林
私自身としては、10~20年後に「リノベーションならリノベるだね」と誰しもに言われるようにしたいと思っています。入社したときからその想いは変わりません。
企業にとってもっとも重要なのは、「品質」と「原価」です。業界で一流と目される存在になるためには、品質向上に一層厳しく取り組まなくてはなりません。それこそが会社が長く続く秘訣だろうとも思います。会社や案件の規模が大きくなるほど、思わぬところで失敗することもあり得ますので、全員が品質への思い入れを共有し、知識と経験を深めていくべきだと思っています。
大久保
一棟リノベーションでは初めて経験する仕事がとても多いのですが、これまでやったことのない仕事に挑戦し、成功すればするほど経験値は上がっていきますし、幅も広がっていきます。支援者の皆さんから助言をいただきながら作り上げることで私たち若手が育成され、それにより業界全体を盛り上げることにつながっていけたらと思います。
平山
小林さんにはベテラン支援者が現場を支えるというリノベる独自の仕組みを作っていただきましたが、6年が過ぎ、皆さん年齢も重ねてこられています。今後はこの仕組みをどうやって継続していくのかがいちばん大きな課題だと思っています。若手の皆さんにもぜひ考えていってもらいたいですね。
小林
継承したいと言われるのはうれしいのですが、もっとこうしたらいいんじゃないかという新たな方法やシステムを若手の皆さんで作っていっていただけたらと思っています。自分がこうだと思ったことをとことんやれる、リノベるはそんな会社だと思いますよ。
私も今年で業界歴50年を超えました。前職時代に作った建物も1つ2つはすでに壊されているようでがっかりしますけど、もしも自分が作った建物をリノベるでリノベーションする機会に巡り合えたら、こんなにうれしいことはありませんね。私も一緒に若返りたいです(笑)。
プロフィール
リノベる テクニカルアドバイザー(支援者)
小林俊雄(写真中央)
1974年4月ゼネコンへ入社、現場勤務を32年経験し、部長職・役員を経て2017年6月退職。2017年10月にリノベるへ入社し現在はテクニカルアドバイザー、通称支援者として従事。
平山雄一(写真左)
都市創造本部 技術統括部部長
中堅ゼネコンで官庁工事・機密書類保管倉庫・分譲マンションなどの新築工事に17年従事したのち、ハウスメーカーや地場ゼネコンで賃貸マンション・木造住宅などの施工責任者として11年従事。2016年9月にリノベるへ入社し、都市創造本部(旧:es)本部の施工責任者として配属。現在8年目で都市創造本部 技術統括部部長を務める。
大久保智博(写真右)
都市創造本部 技術統括部 技術統括一課副課長
ハウスメーカー・改修工事専門会社にて8年勤務し、現場代理人・主任技術者として従事したのち、新築木造住宅・木造、S造、RC造改修工事の経験を経て2019年6月にリノべるへ入社。現在は6年目で現場代理人・監理技術者として従事。2023年8月より 技術統括部 副課長に就任。