【Vol.81】リノベるの若き女性現場監督が挑む!リノベーション施工のスタンダードづくり

2023.08.03
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リノベるには施工管理を行う部門「施工管理課」があり、現在、2名の「現場監督」と2名の現場監督アシスタントが、毎日、施工中の現場を飛び回っています。どんな部門でどんな目的で設立されたのでしょうか。チームを率いる宮本真梨華に現場監督の現状とつくり手としての思いを、施工技術部部長の正木藤広に、現場にまつわるリノベーション業界の課題と今後の展望を語ってもらいました。

■プロフィール

宮本真梨華 Marika Miyamoto(写真左)
リノベる株式会社 コネクト本部 施工技術部 施工管理課 課長代理
2017年入社。設計を経験した後、施工現場への魅力を感じ現場監督に転向。工事パートナーに対してスーパーバイジングの業務も行う。施工管理未経験メンバーへの育成も担当。

正木藤広 Fujihiro Masaki(写真右)
リノベる株式会社 コネクト本部 施工技術部 部長
2021年入社。建材メーカー営業職、住宅メーカーの事業開発・施工管理/アフターサービス・品質管理企画職を経て、リノベるへ。現在は、施工管理・多能工育成・工事パートナーの品質管理・アフターサービス業務を統括。

 

■職人さんが最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、交通整理

「現場監督」とはどんな仕事ですか。
正木:
リノベーションの施工現場で、二次元の設計図を三次元の空間にするために工事の流れ全体のマネジメントを行う仕事です。主な業務は4つ。①スケジュール通りに工事を進める工程管理、②求められている品質通りに施工するための品質管理、③予算通りに工事を進める原価管理、④作業員の安全を守る安全管理などを行います。

宮本:
主だった内容として、現場で施工を行う職人さんの手配や調整、使用する資材・建材の手配や整理を行います。さらに、設計担当者と図面にない細かい施工箇所について打ち合わせて、現場に伝え、職人さんから施工状況を聞き、問題があれば解消するよう、手配を行います。

1日のスケジュールを教えてください。
宮本:
施工現場は9時から17時が作業時間と決まっていることが多いのですが、開始時間に合わせて現場に自宅から直行します。朝、職人さんとの打ち合わせで、当日の作業内容、図面や資料だけではわからない箇所をどう進めるか、施工済みの箇所が指示通りに仕上がっているのかなどについて、確認を行います。

1つの現場には1、2時間ほど滞在して、移動と昼休憩を挟んで、午後には別の現場へ向かいます。そこでも同様の打ち合わせをして、15時半から16時頃、事務所に出社。発注業務や設計者との確認業務を行います。

複数箇所の現場を担当しているのですね。
宮本:
現在、私が担当している稼働中の現場は4件あります。1件1件、プランや仕様が違うオーダーメイドであり、「分離発注形式」を取っていることもあり、大抵3、4件を並行して担当しています。1件の工事期間は2カ月ほどあるのですが、着工時期が少しずつ異なる現場を4件ほど担当するのが基本です。

一部の現場で、リノベるが直接施工管理を行うということですね。
正木:
リノベるでは、工事パートナーに施工を依頼する案件と、リノベるが直接、施工管理をして各工事を分離発注して進める案件の2種類あります。リノベるが直接施工管理を手掛ける案件は直営店の案件の一部です。

分離発注する依頼先はどのような会社ですか。
宮本:
大工さん、塗装屋さん、設備屋さんなどで、複数名職人を抱える企業もあれば個人事業主の業者もあります。私の場合、個人でやられている職人さんに依頼することが多いですね。この現場ならこの会社がいい、このスケジュールならこの職人さんが空いていそうなど、選定から手配までの調整を行います。
また、工種を限定しない「多能工」という、職人さんと同じ役割を担う施工担当の社員が3名、外国人技能実習生が4名いるのですが、その多能工へ作業を依頼することもよく行います。

 

現場監督として仕事をする中で、心掛けていることを教えてください。
宮本:
現場の主役は職人さんです。職人さんが最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、交通整理を行っています。限られた空間で同時に別業種の工事が発生すると、職人さんたちがお互いやりづらかったりするので、工事しやすいタイミングで現場に来てもらえるよう、工程管理に注力しています。

職人さんたちはどんな方たちですか。
宮本:
優しい方が多いですね。私のひとまわり、ふたまわり年齢が上の方が多いのですが、私たち現場監督や多能工…特に新人などの若手に、施工についての専門知識をいろいろ教えてくださることが多いです。職人というと寡黙で頑固といったイメージもかつてはありましたが、今はそんなことありません。人当たりが良い方もおしゃべり好きな方もいますよ。10時と15時に休憩時間を設けているのですが、職人さんたちとおしゃべりすることが毎日の楽しみのひとつです(笑)

私にとっては「宝物」のような存在ですね。新卒で右も左もわからない中、専門知識を教えてくださったのは職人さんたちだったので、恩返しができればという想いはいつも持っています。

タイミングが合えば、竣工してお引き渡しの際に、実際に手を動かしてその家をつくった職人さんをお客さまに紹介しています。「ここを仕上げるのが大変だったのですが、この職人さんに頑張ってもらったんです」と、職人さんにもっとスポットライトを当てたいですね。結構、シャイな方が多くて、「自分は職人だからいいよ」と後ろに回りがちなのですが、職人さんが手掛けた素晴らしい工事内容をお客さまにも知っていただくようにしています。すべての物件でご紹介できるわけではないのが残念ですが。

作り手の顔や、手を動かしている現場が見えるのはお客さまにとって良いことですね。
宮本:
どんな人が何人現場に入って、どうつくったのかはお客さまにはなかなか見えにくいので、少しでもお伝えできればと思います。
リノベるでは、解体工事終了時点、工事期間の中間時点、竣工時の計3回、現場を見ていただく機会を設けています。また週に1度は、その週の作業進捗がわかる写真を設計担当へ提出し、営業担当から作業進捗の写真をお送りしています。

■必要な資質はコミュニケーション力と判断力

現場監督として大変だ、難しいと感じることは何ですか。
宮本:
現場の「図面の通りにつくれない」という声と、設計者の「こうしたい」という要望の板挟みになることですね。お客さまの希望を設計者が実現させたいという気持ちはよくわかるのですが、この計画では施工が難しい、品質が担保できない、ではどうすれば良いのか、といった一筋縄ではいかないことにいつも頭を悩ませています。金額と予算についても考えながら、両者が納得する代替案を施工者として提案する必要があるというところが難しいです。

事前準備を「段取り」と呼んでいますが、段取りをしっかり進められた現場は良い状態で終わりまで進みます。しかし、不可抗力やさまざまな状況から、準備期間が少なくて細かい点が決まらないまま着工せざるをえないことも……。そうした状況は避けるよう努力し、また設計担当を含む関係者へ協力も要請します。着工したのに職人さんの作業を止めなくてはならないことになると、お客さまにも職人さんにもご迷惑をお掛けしてしまうので。段取りをしっかり進めなくてはと思います。

悩みも多そうですね。
宮本:
現場監督は「窓口」としてさまざまな人からの要望や状況が集中してしまうので、一人で悩んで苦しいことも以前はありました。同じ立場の現場監督、職種は違えど現場で一緒に仕事をすることの多い多能工が社内にいるので、彼らに相談することも大切だと感じています。相談することで自分の視野が狭くなっていたなど、何らかの気づきがあります。悩みを職人さんに相談すると「どうにかなるよ」と明るく励ましてもらうことも多いです。

正木:
中古マンションリノベは、管理組合のルールとして作業できる曜日や作業時間が9時から17時と決められているので、限られた時間での工程管理が難しいと思います。ちょっとした遅れが引き渡しに影響してしまうことも多く、工程管理の難易度の高さも悩みどころではないでしょうか。

現場監督のやりがいは何ですか。
宮本:
さんざん悩んだ後に活路が見えてくると嬉しいですね。「こうしたら全方面で調整ができて、これなら希望通りの日程でお引き渡しできる!」となると心からホッとします。最後にお客さまに「理想通りの家になりました」と喜んでいただけると、とてもやりがいを感じます。

図面が決定する前に設計担当者から、壁の位置や仕上げ、間取り、素材などについて相談を受けることもありますが、「現場を見る力」が図面に反映されることも。お客さまの想いがつまっている図面から、何もなかったところに希望通りの空間を形づくれるというところが、楽しさであり面白さでもあります。


現場監督に必要な資質があれば教えてください。
宮本:
かかわる人が多いので、コミュニケーションを取るのが苦ではないことが一番必要な資質だと思います。わからないことがあればその場で確認するという前向きな姿勢も大切です。
また、何を優先すべきかの判断が即時にできる判断力も必要です。「現場はなまもの」とよく言われる通り、決断しないままでも工事は進んでしまうので、止めるべきか進めるべきか、リスクが低いのはどちらなのかを瞬時に決めなければいけないシーンは多いです。

正木:
計画性がある人、「悲観的に考え、楽観的に行動できる」ことも必要ですね。プランAがうまくいかないかもしれない前提で、プランB、Cも事前に考えておき、動き出したら状況次第ですばやく判断し切り替えていく。
さらに、近隣に配慮できるよう、現場外まで視野を広く持てることも必要です。リノベるの施工現場はマンションであることが多く、新築一戸建ての現場と異なり、壁1枚向こう側の空間には居住者がいらっしゃる。そういう環境で大きな音を立てることがあるので、近隣に配慮しながら現場をうまく回せるかというのも結構大きいポイントだと思います。

■現場で学べることが楽しくて、設計部門から現場監督に

リノベる入社後の経緯を教えてください。
宮本:
大学では建築学を専攻して設計を学んでいました。空間づくりに興味があったので、就職にあたっては設計施工が一貫してできる会社を希望し、設計も施工も手掛けられるリノベるに設計職として入社しました。

私が入社した2017年当時は、3カ月の新入社員研修として、工事パートナーの施工現場に毎日行って監督業務などを経験するという内容で、そこで多くの専門知識を学びました。「壁の中ってこういう下地があって、こんな材料でできているんだ」「ここは大工さん、この部分は別の職人さんが手掛けるんだ」など、構造や仕上げ、職務の役割、職人さん同士の専門用語、材料の違いなどについて知れば知るほど面白いと感じて、現場にのめり込むようになりました。

大学では現場について学ぶ機会がなく、「私って施工の実務について全然知らないんだ」と勉強不足を感じました。あらゆる質問に対して職人さんが優しく何でも教えてくださって、知識もどんどん増えていくこともまた嬉しかったですね。現場研修を体験したことで、「設計者になるにしても、現場のことをもっと知ってからにしよう」と考えるようになったことが、現場への入り口となりました。

その後、すぐに現場監督になったのですか。
宮本:
研修後、設計サポート業務を8カ月、その後、子会社の工務店に3カ月程出向して現場監督のサポート業務を行い、現場監督になりました。2年ほど子会社で現場監督を経験した後、工事パートナーに対するスーパーバイジング業務を2年ほど担当しました。スーパーバイジング業務というのは、リノベるの施工現場を担ってくださる工事パートナーに対して、リノベるが基準とする施工管理のノウハウや業務の効率化などを指導する仕事です。
設計、スーパーバイジング業務のいずれも、現場で得た知識や共通言語が生かせて、研修の成果を実感しました。

 

■リノベる全体の施工品質の底上げを図りたい

現場監督の部署である「施工管理課」はどのような意図で設立されたのですか。
正木:
社内に施工管理課を設けたのは、工事パートナーに対して施工品質の指導をするにあたり、まず自分たちが実践して、確実なものとした内容でないと説得力がないと判断したからです。「分離発注」という、あえて難易度が高い管理形態を取っているのも同様の理由です。
施工管理課として現場を管理するノウハウを蓄積し、スーパーバイザーがいる部署と連携して指導するといった流れを設け、リノベる全体の施工品質の底上げを図ることを目的としています。


人材不足という業界の課題がありますね。
正木:
リノベるでは、ミッション「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」の実現に向けて「3つの約束」を掲げており、そのうちの1つ「産業に対する約束」において、住まい手だけでなく、「作り手」「届け手」への課題もあげています。宮本率いる施工管理課は、まさにこの課題を解決するためにある部署です。

職人さんもそうですが、施工管理に携わる人も高齢化が進んでいて、若手の担い手が増えないという現状に対して、こんなに若いメンバーが楽しく仕事をしているという事実をどんどん発信することも必要だと思っています。
スタートしたばかりで課題も多いですが、ミッション実現のために、施工管理課の現場監督と多能工には「リノベーション施工」のスタンダードをつくる、トップランナーになってもらいたいと考えています。

リノベる株式会社が掲げる、ミッション・バリュー・ビジョン。
https://renoveru.co.jp/about/philosophy/

 

現場監督は今後増やす予定がありますか。
正木:
リノベるのミッションに共感し、施工を面白いと思ってもらえるメンバーはどんどん増やしていきたいですね。直接施工管理する物件割合を増やすというのが目的ではなく、世の中にリノベーションという手段を広めていくにあたって、新たなつくり手を増やし、業界全体に寄与していくことが目的です。

実際に手にさわれるような「ものをつくる」ということは単純に楽しいことです。デザインされたものをつくるだけではなく、施工の技術を高めて逆にデザインに影響を与えられる仕事にしたいとも思っています。そうした、つくること=面白いことという認識を持っていただくことで、つくり手が増えていくなら嬉しいですね。

現在、社内に現場監督は何人いるのですか。
宮本:
現場監督が私と津﨑の2名、現場監督アシスタントが金森と李の2名、20代30代の計4名です。津﨑はハウスメーカーからの転職で1年前に中途入社した即戦力、金森は別の職種から社内キャリアチャレンジ制度で今年4月に配属、李は昨年入社後、施工管理課に配属されて1年弱、というメンバーで動いています。現場監督と現場監督アシスタントの2名でチームを組み、同じ現場を担当します。2名のアシスタントはいずれ現場監督となるべく頑張っています。

女性の割合が高いようですが、男性向き、女性向きなどの適性がある仕事なのでしょうか。
宮本:
女性が多いのは偶然です(笑)。一般的に「現場監督」と聞くと、バリバリ働く男性をイメージしがちですが、男性だから有利、女性だから有利などはなく、個人個人がそれぞれの持ち味や強みを生かして仕事をしていますね。メンバーを見ていると、コミュニケーションがマメだったり柔軟だったり、現場での共有が丁寧だったり、体力があったり、人と話すのが好きだったりと、それぞれの特性が発揮できているなと感じます。

働きやすさなどはいかがでしょうか。
宮本:
2名ずつのチーム制にしたことで、どうしても抜けてしまいがちなことも補い合え、知識のある者が教える時間が多くなるという利点があります。現場監督にはこうするべきといった教科書がないので、知識のある者が自分の培ったノウハウや専門知識を若手に直接伝えやすいのもチーム制ならではです。同じ現場を3、4件受け持ちますが、別行動もしつつ情報を共有できるように効率化しています。
また、マンションリノベの場合、工事時間が9時から17時までと決まっているので、スケジュールを調整しやすいという面はあります。新築現場の場合、近隣の環境次第では朝早くから夜遅くまで作業することもあるようなので大変と聞きます。

施工管理課の存在は、お客さまにどんな価値を提供できていると思いますか。
正木:
リノベるを選んで頂いたお客さまは、カウンセリング・物件探し・設計・施工のプロセスを経て、理想の暮らしを実現されます。私たちは最後の施工を担当していますが、それはお客さまの想いやストーリーをリアルなモノにする重要な役割で、100%の品質が当たり前だと考えています。つくり手の100%があることで、初めてお客さまに150%、200%の感動を提供出来るのだと思います。

宮本:
100%を実現させるにはなかなか大変な面はありますが、お客さまに安心していただける、感動していただける家を実現させるために、施工管理課や現場監督の果たす役割は大きいと感じています。

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