【Vol.77】リノベるのラボに、ひみつ道具がやってきた!? デジタル製造加工機「ShopBot」を大公開!(後編)

2023.05.10
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前半では、本社地下1階の「b1./ビーワン。」について紹介しましたが、続く後編は、ShopBotチームの古久保、根本、武田の3名にデジタル製造加工機「ShopBot(ショップボット)」について詳しく話を伺います。

社員みんなが気軽にモノ作りに触れられる場所に

――b1.の目玉の一つとして、デジタル製造加工機「ShopBot(ショップボット)」が導入されています。3人が社内のショップボット担当として活動されていると伺いました。ショップボットについて、お話を聞かせていただけますか。

(これが木材加工専用CNCルーターのショップボット。「欲しい技術を手に届く価格で提供する」をモットーに開発され、1995年にアメリカで誕生した。高性能な3D加工が低価格で実現できる)

古久保:こういった機械は高価格で、限られたプロのみが使用しているものが多かったのですが、ショップボットは、組み立て式にするなどし安価に抑えられているんです。幅広い利用者に使ってもらい、よりものづくりを身近なものとしようという考え方なんですね。

アイデアで解決するという思想や行動力が、リノベるの「課題を価値に」というビジョンにマッチしているなと思い購入を決断しました。

通常、工具を使いこなせなくてはできないデザインも、デジタルファブリケーションで形にすることが可能なので、現スキルの延長線で物づくりができます。

専門分野外のスタッフも設計に相談して図面を起こせば制作が可能なんです。

根本:ちょうど本社が移転するときにショップボットの担当者を探しているという噂を聞き、僕以外いないよと思い(笑)、手を挙げました。3人とも部署も違って全然バラバラの仕事をしていて、忙しいので、いまは2週間1回、夜に定期的に集まっています。僕らで何か作ってみたり、社内で「こういうの作ってみたい」というアイデアを持ってる人がそれを持ち寄ったりすることもあります。

(最初にショップボットを動かして彫った文字)

古久保:裏話としては、いずれここで制作したものを商品として納品することも視野に入れてはいます。すぐにはいかないため、デザインの過程において予算の兼ね合いで断念したものなどをショップボットで制作するという話で導入が決定しました。それでショップボットチームを探し始めたんです。

根本:最初はショップボットを動かすだけで大変で。やり方もわからないし、CADという図面を書くソフトは散々使っているんですが、そこからショップボットを動かすためにはCAMというソフトで加工プログラムに変換する必要があって。それを一切触ったことがなかったので、文字を彫るのもひと苦労でした。その後に最初に作ったのがこのスツールです。ここにあるんですけど、実は結構グラグラなんですよ。グラグラだから、ビスで止めているっていう感じ。

(その後に作った作品たち。右のスツールが初期に作ったもの)

――まだ改善の余地があるわけですね。

根本:ゆくゆくは社員みんなが気軽にモノ作りに触れられる場所にしようっていうのがこの場所なんですが、図面書けなきゃいけなかったり、ショップボットの設定もいろいろ細かくあるので、まずはこの3人のメンバーで試してみて、いずれみんなに広められたらと思っています。

 

ショップボットの二つの面白さ

――この椅子もショップボットで作ったんですか?

根本:これは、ジャスパー・モリソンというデザイナーの椅子を完コピしよう、という目的でやってみたもので。ネットで図面を探して、寸法とかも忠実に再現してみようとしたんですけど、 この背もたれの部分と座面を、どうやってくっつけているのかがわからない。ネットでどの画像を見ても、1枚を切り出しているわけでなく、別部材をくっつけているんだけど、その方法がわからないんです。部材はもうミニマムぐらいに薄いし。その中に例えば強度を持たせるための金属のプレートか何か入れているんだろうか、とか。

(ジャスパー・モリソンの椅子を完コピしてみよう」という企画でチャレンジした)

 

――謎解きみたいですね。

根本:そうなんです。自分たちで1からこれを作ってみよう、だと、うまくできたね、楽しいね、で終わっちゃうんですけど、実際のデザイナーの作品を紐解いていくとまた違ったものが見えてきます。作り手目線になるから。ここってどうやってくっつければいいの、とか、どうすればこのグラつきなくなるんだろう、とか。本当はデザインをやっている人たちは、こういうのをもっといっぱいやるべきで。

武田:勉強して、設計の線を書くというところまではできても、わりとアイデアで止まっちゃうんです。でも、アイディアの段階と実際に作るという工程には、すごく隔たりがあるというか、違った仕組みや能力が必要で。それは社会人になって、いろんな現場を見てすごく実感しました。

根本:設計して図面書く時って、例えば2センチ角の穴を作って、そこに2センチの部材を差し込む、という理屈だけでいいんです。だけど、実際にそれを加工する時って、お互い2センチで作ったらぴったりすぎて入らない。入れるために0.5小さくするのか、0.2でいいのか、色々試しながらやってみる。なんかそういうちっちゃいことの積み重ねなんですよね。 

これ以上かっこいいデザインはない、っていうのを実際の形にする時に、やっぱりうまくいかない部分があって。強度が必要だったりいろんな条件を踏まえて、最終的に実際の形にする。そこが面白いところですよね。

(どうやったら曲線を作れるか、試行錯誤している過程。
ショップボットなら、溝の幅や本数などを自在に変えることができる)

武田:僕がショップボットのエピソードで一番好きなのは、お客様のリクエストに応えて体重計をぴったりはめるための床を作ったっていう話で。

根本:一番好きなんだ(笑)。「体重計を床と完全にフラットにしたいというお客様がいるんだけど何とかならないかな」とデザイナーさんから相談をもらって、床に引く板をショップボットで削りました。体重計って角が丸いから、実際の体重計のR(角の丸みのこと)を測って、サンプル作って。実際にそういうお客様の要望から作るケースもたまにあります。社内でまだ受けられるような体制が整っていないのでまだ非公式なんですが、ニーズとしてはあると感じます。

 

――それをお客様が自分で作れたら、より愛着が持てるようになりますよね。物を大切に使うようになるし、より暮らしが楽しくなるかもしれません。

武田:お客様の期待値を超えていけるといいなと思っています。そういう一つしかない一点ものをすごい精度で作れるというのがショップボットの魅力だし、すごくいいなと。一方で、別の方向性でもいいところがあって、それは大量に複製できること。1度作ればデータとして残るから何度でも同じものを作れます。人が作るとなると、この椅子よかったからあと10脚作って、と言われたら結構大変。でもショップボットはそれが苦じゃない。その二つの面白さがあるなと感じます。

(コーキング剤を片付けるための仕切りもショップボットで制作。
「こんなのがあったらいいな」をかなえてくれるツールだ)

 

根本:僕は、ショップボットを動かし始めて、社内に友達みたいな人が増えました(笑)。ここに来るとフラットな感じになるんですよね。どんなに偉い人でも、モノ作って、やすりがけとかして、お洒落な服にちょっと木くずがついていたりして。それで最後みんなで掃除して帰るみたいな。それがなんかすごい原点って感じがして好きですね。

上司とか部下とか関係なく、立場を超えた感じになる。b1.という場所を作ろうとした時にやりたかったのは、きっとこういうことなんだろうなって思っているんですけど。全社員ができるところまで、広められたらいいですよね。

 

失敗できない緊張感が良いアウトプットを生む

根本:あと、失敗できない緊張感も体験してもらえるのかなと思います。図面書くのって材料代はかからないし、ちょっと変更しようかな、と思ったらデータを書き換えれば済む。でも実際ものを作る時って、材料代はかかるし、作り始めたら変更できないんです。普段仕事をしていて現場で作業しているときも、職人さんたちは、失敗したら材料をもう1回取らなきゃいけないし、あと戻りできないという緊張感の中でやっています。

設計の仕事も大変だけど、どうしても「あとで書き換えられる」という前提が入ってしまう。そうすると結果としてアウトプットも変わってくる。緊張感の中でアウトプットする、そういう訓練にすごくなると思うんですね。

武田:仕事でやっている全体の流れをすごい小さくして隅まで見られるっていう感じですよね。実際に作るところを体験すると、仕事で書いている図面にもフィードバックされていくと思います。線で見ていたものが実際の形になる時に、なにが行われているのかを見る。それはすごくいい経験になるので、ゆくゆく皆さんに知っていただけたらなと。

根本:結局は現場でも設計の連続みたいなところがあって。ちょっとした「ここどうしよう」とか、「こっちの方がかっこいいな」といった選択の連続なんですよね。

武田:検討レベルがどんどん深まっていく感じですよね。設計者は基本の形を決めるけど、施工者には施工図があって、その形を成立させるためには、こういったやり方をします、という図面をまた書いたりする。実際の形にするために、検討の度合いが深まっていく度に設計っていう行為が生じているみたいな感覚があります。

根本:だから、小さいものでも大きいものでもいいから、自分が考えたものを実際に作ってみることってやっぱり大事なんです。とにかく作ってみて、で、失敗してみる。そうすると、作ることの醍醐味、考えることの醍醐味、どちらも味わえるんじゃないかなと思います。作ることも楽しいし、やっぱり考えることもすごく楽しいんです。

古久保:ショップボットでモノづくりを始めるとなると、「何を作る?」から考えて、素材を仕入れて、設計図を作って、手作業して…っていう工程が必ず生まれます。モノづくりをした結果でき上がった「モノ」を見ている人が多いけど、実は裏では複雑なことをしてるんです。

IT化が進んでいるといっても、やっぱり手を動かしている部分が本当に多い。二人は特に感じていると思うけど、ショップボットを体験することで身に染みてわかると思います。

現場以外のスタッフはなかなか直接それを感じる機会がないので、知ることでお互いのリスペクトにも繋がるかなと。

――それがまた、リノベるとしてのモノづくりに還元されていくわけですね。

古久保: ショップボットはプロダクトをつくるものだけど、住まいはそのプロダクトの集合体ですよね。

住まいは命に関わるものという考えが常にあって。家づくりには設計図を考える人や実際に手を動かして工事をする人がいて、それが最終的にお客様の手に届いている。ピースが集まって家ができていて、そのピースの作り方の体験ができるものがショップボットなんじゃないかな。

一人ひとり違った、オーダーメイドの家づくりを提供しているリノベるだからこそ、モノづくりの原点に立ち返える場所が必要です。まずはこのチームを中心にきっかけづくりをしていきたいと思います。

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