【Vol.59】顧客、買取再販事業者、設備メーカー、AR技術でそれぞれの課題を価値に。「ARリノベ」に込めた想い

2020.09.11
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中古住宅の購入+リノベーションのワンストップサービスでオーダーメイドの住まいを提供する私たちリノベるは、買取再販(リノベーション済み物件)事業者様向けに新たなサービスをスタートしました。オーダーメイドの住まいづくりとは、一見真逆に思えるサービスを始めた理由とは?
AR技術を手掛けるKAKUCHO株式会社とともにスタートした、買取再販事業者様向けプラットフォームサービス「ARリノベ」の詳細と展望を、KAKUCHO 代表の竹本 泰輔氏とリノベる執行役員の三浦 隆博に話を聞きました。

■プロフィール


竹本 泰輔 Taisuke Takemoto
KAKUCHO株式会社 代表取締役
数々のWEBサービス・WEBメディアの立ち上げや受託開発を経て、2017年にARに特化した事業/サービスを手がけるKAKUCHO株式会社を設立。現在は、ARインテリアデザインアプリ「FURNI」や既存のWEBサイトにARコンテンツを埋め込める「Web AR」を展開。

 


三浦 隆博 Takahiro Miura
リノベる株式会社 執行役員
個人向けワンストップ・リノベーション事業、遊休不動産のリノベーションを手掛ける都市創造事業など、リノベーション事業全般における統括責任者。住宅ローンのオンラインマッチングサービスを手掛けるモゲチェック・リノベーション株式会社の代表も務める。

新サービス「ARリノベ」について


三浦
今回リリースした「ARリノベ」は、買取再販物件(リノベーション済み物件)の内装・設備の一部をカスタマイズ可能にし、より幅広いお客様に魅力づけできるようにするという、買取再販事業者さま向けのサービスです。
従来の買取再販物件ですと、当然、内装工事が完了した段階でお客様にご紹介しますが、「ARリノベ」では内装工事が8割の状態で販売を開始します。そして、キッチンなどの設備仕様や間仕切り壁といった残りの2割を、タブレット端末上で完成形をイメージしながら、お客様ご自身でカスタムしていただきます。



タブレット端末で完成形をイメージする際に活用するのが、AR(拡張現実)技術を用いた独自のシステムです。 内覧の際にその場でタブレットをかざすと、リアルに表現されたさまざまな内装デザインや設備のCGが、目の前の空間にリアルタイムで合成されます。

例えば、まだ手つかずのキッチンのスペースを前に、お客様ご自身が、気になるキッチンを試しに“当て込んでみる”ことができるわけです。
設備や内装にこだわりたいけれど、「完成形のイメージがわかない」とおっしゃるお客様にも、安心して選んでいただくことができます。
リノベ済み物件を確認できる安心感と、オーダーメイドリノベの自由度を兼ね備えた、言わば“第3のリノベーション”です。


さまざまなイメージで確認

「AR(拡張現実)」とは


竹本
AR(Augmented Reality /拡張現実)とは、目の前にある実空間をとらえた映像に、3Dオブジェクトやデジタルデータをリアルタイムで配置することのできる技術です。今では一般的なスマートフォンやタブレットでの利用が可能になり、私たちの暮らしのなかで少しずつ身近なものになりつつあります。特に広告やゲームといったエンターテインメント領域での活用が進んでおり、最も知られているのはやはり世界中でヒットしているスマートフォンゲーム「Pokémon GO」ではないでしょうか。

一方、エンタメ以外での実用的な活用例は未だそう多くはありません。私たちKAKUCHOは、このARをビジネスを支えるソリューションとして社会に浸透させることを目的に設立した、現在4期目のスタートアップです。

以前から、ARと相性のいいカテゴリとして、住宅や内装・インテリアといった空間を扱うビジネスに注目しており、今回リノベるというパートナーを得て、これからの時代のスタンダードとなりうるサービスを立ち上げることができました。

「ARリノベ」が、リノベ済みでもフルオーダーでもない第3の選択肢に


竹本
もともと山下さん(リノベる代表)とは以前から親しくしていて、改めて一緒にサービスを検討しましょうという機会をいただいたのが、きっかけでしたよね。最初の打ち合わせの場で我々からARについて紹介させていただいたのですが、ずっと黙って聞いていた三浦さんが、最後に「これは面白い!」と声を上げられたのを覚えています。

三浦
その場で、活用のイメージが沸いたのをよく覚えています。
一つは、多様化しているお客様のニーズにピンポイントで応えられるのではという観点。リノベるのミッションである「かしこく素敵な暮らし」の提供を、より解像度高く実現できるということです。

リノベーションという選択肢が市民権を得るにつれ、「リノベる。」の顧客層にも少しずつ変化が生じています。例えば、以前は未改装の中古物件をお求めになる方がほとんどでしたが、今ではリノベ済みの再販物件を購入した上で、一度スケルトンにしてフルリノベをするお客様、また一部の壁の撤去や設備交換だけを行うような部分リノベを希望するお客様が目立つようになっています。

リノベーションが一般的な選択肢になったことで、中古マンション市場も活性化し、条件を満たした未改装物件が見つかりにくくなっているとともに、フルオーダーするほどではないものの、「少しだけ自分らさしさを加えたい」という方が、中古リノベという選択肢をより積極的に検討するようになってきているのでしょう。

事実、「リノベる。」を検討したものの成約には至らなかったお客様の約2割ほどが、その後、リノベ済み再販物件を購入されたというデータもあります。オーダーリノベか、リノベ済みか。この二者択一では汲み取れていなかったお客様のニーズを、ARなら叶えられると考えたのです。

買取再販事業に、新たな可能性を


三浦
そしてもう一つが、リノベるが掲げる3つの約束の一つ「産業に対する約束」、住まいの作り手・届け手である買取再販ビジネスの課題解決という観点です。
ご存知のとおり、現在のリノベーション市場において、取り扱い物件数は、ワンストップよりも買取再販のほうが圧倒的です。さらに、新規参入も含めて、買取再販事業者の数はますます増えています。

私自身も過去に買取再販事業に携わった経験がありますが、こうした状況下では、“物件の差別化”が極めて難しいんですね。一方、差別化を図るために自由設計や設計変更への対応を考えたとしても、事業期間の長期化、設計者や顧客対応の担当者の不在といった問題が出てきます。

それならば、8割だけ工事を終わらせてしまって、キッチンや床など残った2割をARでバーチャルに確認できるようにすれば、設計者がいなくてもお客様対応ができます。金額までわかるようにすれば、お客様もスピーディに決断できますし、事前に8割作っているので、買取再販事業の生命線である事業期間にも影響はありません。ARによって、硬直化しつつある買取再販というビジネスモデルに新たな可能性が生まれるのです。

住設機器メーカーと住まい手を直接つなぐ「ARリノベ」


竹本
別の観点から言うと、「ARリノベ」は、住設機器メーカーと住まい手となるエンドユーザーとが直接つながるチャネルとしても機能しうると考えています。現状、住設機器メーカーにとって提案の窓口となるのは、買取再販事業者や工事会社の購買担当者の方であることが一般的です。メーカーが、例えばデザインや素材にこだわった製品をつくったとしても、事業者の仕入れはどうしても価格優先になってしまう。これは買取再販というビジネスの仕組み上、やむを得ないことです。
「ARリノベ」なら、購買担当者でも設計担当者でもなく、住まい手となるお客様自身が製品を選ぶ、という形を実現できます。メーカーにとっては、住まい手となるお客様に対してダイレクトに提案できるようになることで、より高単価の製品を訴求する機会も増えるでしょうし、今までなかなか得られなかった「住まい手のリアルな声」を新しい商品開発につなげることもできるでしょう。

三浦
それが、日本の住宅設備・機器のさらなる多様化、ひいては住まいそのものの多様化につながり、また一歩、誰もが自分らしい住まいを選べる世の中へと近づくきっかけになるといいなと思っています。

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関連情報

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